Neutral football

現実の殻を破る。フットボールと社会をつなぐ

生まれて初めて、サポーターになった

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自分は生まれてこのかた、どこかのクラブのサポーターになったことがない。

「久保田さん、好きなチームはどこですか?」とかよく聞かれるけれど、そのたびに「どこもないっす」と答えてその場をシラけさせてしまう。ましてやサッカーを仕事にしてしまってからはもう、ファン目線でサッカーの試合を観ることは、ほぼなくなってしまった。

あそこはいいサッカーしてるから勝ってほしいなとか、それ程度は思うこともあるけれど、どこかのクラブを贔屓にして熱狂的に応援したという経験が、国内海外問わず、今まで一度もなかった。

毎週末のリーグを楽しみにして一週間を過ごして、週末ごとに一喜一憂して。
羨ましい。俺もそんな人生送りたいなぁと思って無理やりどこかを好きになろうと思ってはみたものの、やはり作為的に好きになろうとしたって所詮それは無理な話で、好きになれるわけもない。

、、だった。つい2ヶ月前までは。

そんな自分が、今ようやく「このクラブ、好きだ」「観戦じゃなく、応援に行きたい」と、純粋に心の底から思えるクラブに出会えた。これは錯覚ではなく、たぶん本当にそう。
毎週末を楽しみにしている自分に、自分が一番驚いているのだから。

今回は、そんなお話。

話は約2ヶ月前、3月上旬に「なでしこリーグ」開幕前のトレーニングマッチとして行われた
ジェフ千葉レディース vs バニーズ京都SC」のゲームを、千葉県まで観戦に行った日から始まる。

ジェフ千葉レディースは、なでしこリーグ1部の強豪クラブ。
対してバニーズ京都は、チャレンジリーグから「なでしこリーグ2部」へと、今シーズン昇格したばかりのクラブ。

バニーズは友人でもある越智健一郎氏がGMを務め、なおかつ、親交のある千本哲也氏が監督。千本さんは昨シーズンの開幕前に東京まで会いに来てくれて、その時は、チームづくりの観点でいろんな話をした。ワンピースのこと、孔子のこと…

越智さんがGMで千本さんが監督。いろんな苦労話も聞いていたから、バニーズのことはずっと気になってはいました。

3年前には、こんな記事も書いてます。

選手の自主性を伸ばし、魅力的なサッカーで「京都から日本をひっくり返す」女子サッカークラブのはなし | FootballEDGE

もちろん気持ちで応援はしていたけれど、京都という遠い地でもあるし、毎試合観に行くとか、毎週末を楽しみにしてワクワクドキドキハラハラ…という「サポーター!」という程では、正直なかった。

そんな僕でしたが
この日の夜は越智さんを招いて渋谷で勉強会を行う予定。で、せっかくバニーズが遠征でこちらに来てるならと、越智さんのお迎えついでに、ジェフとのゲームを千葉まで観に行った、というわけです。

www.sakaiku.jp

開始1分、越智さんが監督をしている京都精華の卒業生、谷口木乃実選手が相手DFとの接触で足を負傷し、早くも交代。今シーズンからバニーズに移籍して来て、そのシーズン開幕直前での怪我。本人も相当ショックだっただろう。表情を見たら完全に落ちていて、彼女が高1の時から知ってるし応援していたので、本当に残念な負傷だった。

そして
この予期せぬアクシデントにより、交代でピッチに送り込まれたのが 小川くるみ という選手だった。

今シーズン、大卒でバニーズに加入したばかりという彼女。
恥ずかしながらこの日初めて彼女の存在を知ったのだけれど、ゲームが進むにつれ、彼女が放つ独特のたたずまい、そしてそのプレーぶりに、僕はだんだんと惹きつけられてしまった。

予期せぬタイミングでの出場ということで動揺もあっただろうし、急がずにショートパスを細かく繋いでいくというバニーズ独特のスタイルに自分を早く適合させなければ、という思いもきっと強くあったのだろう。そんな彼女のひたむきさと必死さ、時には葛藤が、とても伝わってきた。

クレバーな選手なんだろうなという印象を持ったけれど、プレースタイルだけでなく、彼女のひたむきな姿そのものが、とても魅力的に思えて。
また観たい、これから応援していきたいって思える選手に出会った、そんな気分だった。

 

そしてもう一人
この日のゲーム、僕らが観戦してる簡易スタンドの横でずっとビデオ撮影を担当していたのが、加戸由佳 選手。

彼女は岡山の湯郷ベルで活躍して、なでしこリーグで通算200試合に出場している一流選手。2013年には、日本代表にも選出されている。

【インタビュー】バニーズ京都SCへ新加入の元日本代表DF加戸由佳「本気でサッカーと向き合い、新しい自分に!」 | SOCCERLTURE

今シーズンからバニーズに移籍してきたものの、足を怪我してまだ復帰できていないということで、この日はベンチ外だった彼女が、撮影係を自ら買って出ていた。

横でそれを見ていたGMの越智さんが「いいの?」って聞いたら、
満面の笑顔で「これくらいしか出来ないですからー」と。

日本代表経験もあるベテラン選手の、この謙虚な姿にもうズッキュン。なんて素敵なパーソナリティーなんだろうと。なかなか出来ないですよね。早く復帰してほしいな。

小川くるみさん(No.7)そして加戸由佳さん(No.16)
思いがけず、この2人の大ファンになってしまった僕なのでした。

 

余談ですが
今シーズン、バニーズの選手達はアウェーの試合へ新幹線で移動する際、全員お揃いのシャツを着用するらしく。
静岡の新進気鋭ブランド「Chapeu(シャペウ)」作成のカッコいいシャツなのだけれど、そのシャツを全員分揃える費用をどう捻出するか思案したGM・越智氏は、選手一人一人の「シャツサプライヤー」を募るアイデアを思いついたと。

「あの選手が着るシャツの費用は自分が出した」
「自分はあの選手をサポートさせてもらってる」

となれば、間違いなくその選手の動向は気になりますよね。
「今日は試合出たかな」「ベンチ入りしてるかな」「怪我の治り具合はどうかな…」とか。
すなわちそれは、直結でファンを増やすことにも繋がるし。

もちろんこの日さっそく、僕は小川くるみ選手と加戸由佳選手、二人のシャツサプライヤーに名乗りを挙げました。
後日、二人からお礼の動画が送られてきた。嬉しい〜

 

翌日は、ヴェルディグランドにて日テレベレーザとのゲーム。
前日よりも「自分らしさを出そう」という思い(僕の勝手な想像だけど)を小川くるみ選手から感じて、なおさらファンになった。

 

バニーズのサッカーは、観ていて楽しい。

急がず、慌てず、短く緩いパスで相手を引きつけながらいなし、そこに個々の特性をうまく作用させながら局面を打開していく。自分がミスらないことじゃなく、味方を成功させることで成り立つ相互作用。そのためにもなおさら、個々の技術と味方同士が連なる意識と仕組みが必要な、実はとてもハイブリッドなフットボールだ。

「相手の速さを利用するんやで〜」

千本さんが盛んに出していたこのコーチングに、バニーズの「やりたいこと」がとても表れているような気がした。

もっと観たい。素直にそう思わせてくれる、ワクワクフットボール

 

10日後の3月21日、いよいよなでしこリーグが開幕。
バニーズはアウェーで「エルフェン狭山」とのゲーム。自クラブの試合が中止になったので、車を飛ばして川越まで観戦に。

雪が降り、グランドの状態もかなり悪い中でのゲーム。バニーズの特徴であるショートパスを披露するには難しい状況だったけれど、逆に、技術はこういう劣悪な環境下でこそ初めて試されるし、真価を発揮するもの。
一度染みついた技術と習慣は錆びつかない。バニーズの選手達のちょっとした持ち出し方や相手へのいなし方が、この悪条件下だからこそ、余計に際立っていた。

ベテランCB・山本選手のゴールで1-0勝利。試合終了の瞬間、僕の前で応援されていたある選手のお父さんは、号泣しながら喜んでいた。

まだまだ認知度の低いなでしこリーグ、しかも1部でもない、全国的にはまだまだ無名のクラブ。でも、たった一回の勝利で人を泣かせるチカラがある。
選手をサポートする、クラブをサポートするってこんな喜びがあるのかと、うまくは言えないけれど、しみじみ感じた光景だった。

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そして僕はこの日、ようやく「心から応援したい」と思えるクラブを見つけた気がして
つまり「サポーター」になれた気がして、そんな自分に驚いてもいた。

監督、GM、選手達、クラブを支える人達、クラブが持つ雰囲気…
それら全て含めて「好きだな」って思える。
たったひとつの勝利が掛け値無しに嬉しかったから、この気持ちはきっと、錯覚ではないのだろう。
「これからは《観戦》ではなく《応援》に行こう」と、生まれて初めて思った。

 

それからひと月以上が経ち、ゴールデンウィーク真っ只中の5月3日。
バニーズ京都が、東京にやってきた。

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武蔵野陸上競技場で行われたスフィーダ世田谷戦。当然応援しに行ったけれど、強風の中、スカウティングされやすい特徴を見事に突かれ、0-3で敗戦、、

その日の夜から、仕事を依頼されて京都へ。せっかく京都に行くならと、ゴールデンウィーク最終日(6日)に京都で行われるホームゲーム(vs ニッパツ横浜FCシーガルス)も応援してから帰ろうと思い、滞在を延長して応援に。

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ちなみにこの試合のハーフタイムでは、例の加戸由佳選手が抜群のMCぶりを見せてくれてました。人を惹きつける魅力が、これだけでも伝わってきますね。

 

 

楽しいハーフタイムとは一変。ゲームでは、やはり「バニーズの特徴を消す」相手のしたたかさにハマってしまった形となり… 0-2で、またも敗れてしまった。

この日の試合の様相が、分かりやすく記事になってました。今のバニーズの立ち位置的なものも、感じ取れると思います。

パスサッカーが陥る「不思議な試合」…バニーズ京都SCが表すのは、日本の未来?

 

過酷なリーグは容赦なく続く。その翌週、13日に行われたアウェーのオルカ鴨川戦。この日は仕事でどうしても応援に行けなかったのだけれど、スマホを片手にリアルタイムで状況をずっと追いながら、バニーズの試合を気にしていた。

しかし、失点の速報ばかりが更新されていく。終わってみれば、0-4で3連敗。バニーズにとって、5月の三連戦は非常に辛いものとなってしまった。

 

現時点で1勝1分け4敗、10チーム中9位。

バニーズが戦っているのは、もはや育成ではない《トップリーグ》の舞台。ただ内容さえ求めていけばいいというものではない。それは重々承知しているし、千本さんをはじめとするバニーズのスタッフ陣も、そんなことは言われるまでもなく分かりきっていると思う。

しかし

結果を求めると同時に
「このサッカーをまた観に来たい」
「こんな楽しいサッカー、他のチームはどこもやってないよ!」
と、ファンに思ってもらえる魅力的なサッカーを追求していくのも、結果と同じくらいに求められる重要なミッションでもあると思う。トップリーグだからこそ。

現に僕はその部分も含めて(かなり大きな要素)バニーズのサポーターになったのだから。

さらに
「やってて楽しい」
「このサッカーなら、私はまだ現役でサッカー続けていきたい」と
選手達が心の底からそう思えるようなサッカーを、監督の千本さんは追い続けているのだろうし。

 

千本さんが三年前に話していたこと
「理想を目指しながら、現実と向き合う」
そのハードルは三年前より遥かに高い。でもだからこそ、それをいなし、連なるチカラでパスを繋ぎ倒しながら、高い壁を乗り越えていってほしい。

ブレず、諦めず、貫くと決めたものは貫いて、最後まで「らしく」戦ってほしいです。

自分の力ではどうにもならないことを、自分のことのように思って心配するのも、サポーターならではの苦しみなのだろうか。
近いうちにきっと自分のことのように喜べる日が来ることを知っているから、きっとどこのクラブのサポーターたちも、同じようにクラブを信じ支え続けていけるんだろう。

 

微力ながら、応援してます。バニーズ京都SC、ガンバレ。

www.bunnys-kyoto.sc