Neutral football

イメージした理想が現実を塗り替える。フットボールと社会をつなぐ

8人制なんかやめてしまえ ②

Part ① はこちら

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Part ②

【 退場処分の場合でも、選手補充してオッケー!の問題 】

8人制の試合の場合、自チームの選手がレッドカードで退場になったとしても、その代わりの選手の補充が、ほとんどの地域で認められている。

何だそれ。おかしいっしょ。

アンケートによると、埼玉県では、補充は認められていないそうです。神奈川県の某市でも、反対意見が根強いため、2016年度からは廃止になったそうだ。

けどやっぱり、ほとんどの地域では補充OKが当たり前らしい。普通に考えれば、それじゃぁ退場になった意味ないじゃん!と僕自身は思うのだけれど、アンケート結果を見ると、そう思わない人も案外多い。

その主な理由は、大きく分けて以下の3点。
「子どもにペナルティーを与える必要はない」
「8人制は必ず8人でやるべき。一人少ない場合、負担も大きい」
「子どもの試合でレッドカードはまず出ないから、あまり問題とは思わない」

これに対して
「退場になった選手にもチームメイトにも、退場になるとどうなるのか?をわかってもらう、その方が必要。負担を言うなら7人で交替をしながら指導者が頭を使うべき」
「子どもを単に子ども扱いしないで、一人のジョカトーレとして見てあげるべき」
「ファールをしても構わないと受け取る指導者が出てきてしまう恐れもあり、選手自身もファールしても構わないという誤認識が生まれてくるかもしれない」
という反対意見も多数。アンケートの割合だけで言えば、肯定否定、ほぼ半々でした。

僕のスタンスは明快です。こんなのおかしいよ。退場しても選手の補充OKなルールなんて、全国で即廃止にすべき。

《ある地域のルール》
① 補充OK。補充選手がいないチームは、その時点で不戦敗扱いとなり、フレンドリーマッチになる

おいおいなんだよそれ!理不尽で不公平すぎるぞ。
例えば双方が喧嘩をして両成敗のような形で両者にレッドカードが出された場合、片方のチームは控え選手がいるので補充OK、しかしもう一方のチームは8人ジャストで試合に臨んでいたので補充選手がいない、だから不戦敗。
何じゃこりゃ。明らかにおかしいじゃないですか。これを公式戦の公式ルールにしてる地域があるというのが、ちょっと信じられない。

② 補充OK。その代わり相手チームにPKが与えられる
エリア外でもPK…オーマイガッ!もはやサッカーではない

「子どもの試合でレッドカードなどほとんど出ないし、この制度をわざと悪用する人なんていない」という意見も多いようだ。確かに、子どもの試合でレッドカードは稀の稀。でも、あることはある。そしてここ大事なんだけど、相手選手を倒しておいて「OKOK!仕方ない」とか「謝っとけ」とか言う指導者がまだまだ多い以上、僕はそう簡単に「そんな人いないよ」という性善説には立てない。だって「謝っとけ」「とけ」ですよ。

過去の話だけど、うちの選手が怪我させられるほどのタックルをしておいて、笑いながら「いーよいーよ!」って言ってる指導者もいた。僕その場で怒鳴り込んだけど。「笑ってんじゃねーよ、怪我したらどうすんだよ!選手生命終わるかもしれないやろ!」と。

こういう時はなぜか関西弁になるのはどうしてだろう。
まぁそれは置いといて、そういう「激しいプレーの裏返しなんだからファールも仕方ない」とか笑って言うような輩がいる限り、そこに付け入ることができるルールを残しておく意味が、僕には全くわからない。

アンケートにもあったように、確かに8人制で一人少なくなったら相当に負担は大きいしハンデにもなるけど、選手達にとっては「退場」の意味を肌で痛感し理解することが出来る機会になるし、指導者にとっても、一人少ない試合をどう切り抜けるかなんて、最高に面白いじゃんか。腕の見せ所だよ。

 

【 8人制、現場の声 】

「人数が少なくても大会に出場出来る」
「人数が少なくスペースがあるので、色々な把握がしやすくなっている」
「失敗・成功がよりダイレクトにチャンス・ピンチへと結びつくため、1人1人に責任感が芽生える」
というような、8人制の好影響を述べる声も多かった。

そして先ほど「そんなにプレー機会増えてないっしょ」というようなことを書いたけど、もちろん「ボールに触れる回数、プレー機会が増えた」という声も多数あったことは、ここに書いておきます。

しかしその反面、悪影響を述べる声の方が、今回のアンケートに関して言えばやっぱり多かった。
「低学年からの8人制によって、攻守が分断される。後方の選手達がリスクを恐れて攻撃に参加しなくなる傾向がある」
「ハッキリいって《フィジカル至上》に感じる。成長度の違いがハッキリしているジュニア年代に、68㍍×50㍍は広すぎ。大人ピッチの半分という設定は安易」
「一人一人の距離感が広いのでやりたい事がやり易いと思えるが、その反面、身体能力の差がはっきり出るので、劣ると思われる選手の育成が難しい」

「成長に合わせた人数とピッチのサイズを再考して欲しい。海外は2年刻み。日本の6・3・3制に於いて、6の最終と3の最初に繋がりが薄くなるのが残念。
6年生では105㍍×68㍍正規ピッチに正規ゴールにて11人制にて行い、次のジュニアユース年代への繋ぎとするのが理想」

「ミスを極端に恐れてしまう傾向もある。1つのミスが失点に結びついてしまうし、また1つのミスマッチから組織が崩れてしまうことが多く、力の劣っている選手を使いづらいのが正直なところ。勝敗にこだわるなというけれど、選手が1番こだわるし、自分のせいで負けたと気にしてしまう」

これを続けていくとどうなるか?

「ハードワークができるオールラウンダーは生まれやすいが、面白い選手や一芸に秀でた選手は生まれにくくなるのではないか。
小学生という一番アイデアが豊富で柔軟性もありいろいろな可能性を秘めている年代でミスをしないことを一番に求められたら、魅力ある選手は出にくい」

この意見に尽きるでしょう。

 

【 球技は奇数でやるもの 】

ほとんどの公式戦が8人制になり、そのために練習試合も8人制でやる。練習試合の相手を探すマッチングサイトなどでも「市大会を控えてるので8人制でお願いします」ばかり。

コレコレこういう理由で8人制が子どものためになる、という確固たるものがあるのならばそれでもいいと思うけれど、公式戦が8人制だからという理由だけでただ盲目的に練習試合で8人制ばかりやっているのでは、指導者としては少し悲しい。神奈川県では1月に11人制の県大会があるので、12月頃から急に、11人制の練習試合希望が増える。神奈川県の皆さん、そんな急に8人制から11人制に繋ぐことできたんですか?あれだけ8人制!8人制!って言ってたのに〜

ちなみにうちは9人制をコンスタントにやりながら、特に高学年は、11人制へのイメージを常に持たせるようにしてる。僕の中では球技は奇数でやるものという前提があるので、7人制か9人制がいい。中でも9人制の方が、子ども達の頭と感覚の中で11人制へ繋げるイメージが、より分かりやすく描けると思う。
話せば長くなるので書かないけれど簡単に言えば、11人と同じ奇数なので、一人二役をイメージするだけで即、11人制をハッキリと浮かび上がらせることができる。だからスムーズに移行できる。奇数という意味では7人でもいいんだけど、7人だとちと人数が少ない。その意味では8人制でのデメリットをより被ってしまう。なので9人。今やってる8人制のサイズでは明らかに広いので、一人増やすことでより適正サイズに近づくし。

ところで、球技は奇数でやるものという前提…
サッカーは11人、フットサルは5人、野球は9人、バスケは5人、ラグビーは15人(7人制も)。
もちろんバレーボールやアイスホッケー(6人)などの例外もあるけれど、上記のように、ほとんどの球技は奇数で行うものばかり。これ、どうしてでしょうか?自分なりの仮説を立てて考えるのも面白いよね。

こういう意見も。
「サッカーはフィールドの10人でプレーするとすれば偶数での関係での学びが必要なので、8人ではなく7人あるいは9人制が望ましい」

なるほど。そこに付け加えるとするならば、GKを含めればやはりサッカーは奇数で、そうするとプレーする時にどこか一つが余る。その「余り」をどう捉えてどう使えるかが、大事なのではないか。
左右対称で考えた時に、奇数だとどちら側にも属さない「1」が生まれる。この「1」の存在が、どんなスポーツでもゲームをつくっていく上での重要なワンピースになる。1の捉え方、どこで1をつくるかとかね。
バレーボールも元々は9人制だった。それが6人制になったけど、どこかで1が欲しくなって、その1の存在としてリベロという特別な選手を置く流れになったのかなぁとか、自分の中で勝手な妄想が広がるばかり。

サッカーの話に戻ると、ボールの出し手と受け手の2人だけではなく、そこに次の次の受け手となる3人目、もしくは守備の1人目となる3人目がいて、初めてサッカー(球技)というゲームの原理が成立すると僕は思ってる。なので、奇数で広げていく。

皆さんはどう考えますか?

 

【 まとめ 】

「8人制にすればそれだけでレベルが上がると思っている指導者がいる。この制度をいかに利用するか、という部分での指導者レベルの向上はまだ見られない」
京都府の指導者・Kさん)

「8人制には8人制の良さが、11人制には11人制の良さがあるので、8人制が11人制につながるかどうか?を考えるよりも、どうつなげていくかを指導者(もちろん僕も)が考えていく必要があると思う。未来からの逆算は必要」
(静岡県の指導者・Hさん)

「少年サッカーは奥深いので8人の良さ悪さ、11人の良さ悪さと両方あるので一概に言えない。ただ、サッカーは人数じゃないので騙し合いの本質が存在すれば良い話です」
(神奈川県の指導者・Oさん)

「8人制だからどうとかよりも、指導者が試合に対して何を重きを置き、選手をどういう選手にしたいかで人数は決めればいいのでは」
(神奈川県の指導者・Aさん)

まとめにふさわしいご意見ばかり。ここに共通することこそが今回僕が一番言いたかったこと。つまり8人制の是非よりも、それを扱う指導者側の在り方を問いたかった。偉そうで申し訳ありません。

何をするにもどんな制度の下でも、結局、それを活かすのも無駄にするのも指導者次第。学ぶのをやめたら指導者をやめなければいけないという言葉があるけれど、子ども達にとって「最初のコーチ」になるジュニア年代の指導者ならば、常に現状を疑って自分を省みて、一つの考えや一つのやり方に固執せず、自らを常にアップデートしていかないといけない。

指導者を名乗るならば、子ども達の「数年後」を見据えながら、目の前の試合や練習に向かうべきだ。

だから別に8人制をこのまま続けていくのならそれはそれでいいし、その中で、それぞれが工夫と試行錯誤をしていかないといけない。物事には必ずプラスとマイナスがある。8人制バンザイ!だけではなくてその功罪をしっかり理解した上で扱わないと、結局は子ども達が犠牲になる。

僕は8人制は嫌いだけど、それでもその中で工夫を続けていく。もちろん自分が主催する試合ならば、絶対9人制か11人制でやるけれど。1の重要さを、選手と一緒にに考えながら。

結局は指導者の在り方次第。一緒に頑張ろうぜよ!というお話でした。

 

(この記事は、筆者がコラムを連載している『Football EDGE』にて2016年1月に掲載した内容を再編集したものです)