ドリ練をする理由、ドリ練の意味
うちのクラブでは、いわゆる「ドリ練」多くやります。相手つけずに。
「スペインではそんなドリブル練習もリフティング練習もしませんよ」という、通称・スペイン帰りの指導者の方の声を、よーく聞きます。
「ハイそうですね、でも僕は日本人で、そのスペインにいつか勝ちたいと思ってるのでスペイン人がやらないならラッキー、なおさらドリ練やろうと思います」といつでも答える用意はできてるんだけど、実際に自分はまだ面と向かって言われたことがないからいつか言われたい…w
まぁそれは置いといて…
無駄に論争をしても仕方ないので、ここで、僕が考えるドリ練の意味を書いてみたいと思います。
メッシのようなドリブルをさせたい!とか
ネイマールのような華麗な技をさせたい!とか
どうせそんなことを考えてドリ練させてるんだろという浅はかな誤解は、解いておきたい。
ドリ練をする意味、を書く上で前提になるのが、
『サッカーにおけるプレーは、一つ一つの切り張りではなく、全てセットで考えよう』というフェーズ。ここから、順を追って書いていきますね。
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【 セット ① ~ 攻撃と守備の同時進行 】
サッカーは、相手よりもスコアで上回れば勝てるスポーツ。ならば、目的はふたつ。
・相手よりも多くゴールを奪うこと
・失点を一点でも少なくすること
この両方を セットで考えるべき で、攻撃的、守備的 とサッカースタイルを分けること自体がナンセンス。
守備をしやすい攻撃 と、攻撃に移りやすい守備。
攻撃中に守備のことを考え、守備してる間に、攻撃に移る準備をしておく。
《 攻撃中に、守備の準備しちゃお 》
・奪われ方はこっちが決める。どういう形になると奪われやすいか、相手よりも味方のほうが知っている。だから、奪われる想定の陣形を先にとっておく。
・奪われることを想定していればすぐに奪い返せる。さらにチャンスが深まる。
・すぐに奪い返せる距離までサポートが来るまでは、仕掛けない。攻めない。
「もう奪われてもOK!むしろ奪われてほしい 笑」(奪い返して逆襲する気満々)
「今はまだ奪われないで!準備できてないしー」
これにより、ファーストタッチの質、ボールの持ち方、ボールの動かし方、が変わってくる
《 守備中に、攻撃の準備しちゃお 》
・相手ボールを奪いに行く際は、ふたりで行く。そこで奪えば、そのふたりのコンビで攻撃を始められる。だからそのコンビは、相性の良いふたりを組ませる。
・奪ってもすぐ奪われるのが一番嫌な形。なのでこちらで一番巧い選手(もしくはコンビ)が、相手からボールを奪えるような形をつくる。そうすれば、すぐには奪い返されない。
その一番巧い選手(コンビ)のところで奪えるように、相手ボールを誘導する。
もちろん、そんなにうまくいくことも多くないので、奪ってすぐに奪われない、巧い選手を多く育てることが、一番の守備強化なのだけれど。
守備を強化するために、巧い選手を育てるんです。
・守備のため(すぐ奪い返されないため)に、奪った後のボールの持ち出し方を練習する。これは、ドリ練の大きな目的の一つ。3タッチ以内にトップスピードに乗る。
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【 セット ② ~ ドリブルとパスも、全てセット 】
ゲームにおいて起こること … 受ける、拾う、奪う、離す
「持つ」という項目はない。「持つ」は、あくまでも「離す」までの手段。
「奪われる」のも「離す」の一つ。受けたり、拾ったり、奪ったりした後の持ち方がヘタだから奪われる。そして「無駄に持つ」から狙われやすくなり、奪われる。
「持つ」(ドリブル、フェイント)は何のためか … 次のパス(離す)のため。
① 一人目を抜いた後は、二人目が必ずカバーに来る。その二人目が本来いた場所にボールを入れてチャンスを広げる、ためのドリブル
② フェイントやボールのズラしで、相手の足のすぐ横をパスを通してく。日本がUAEのオマルにやられまくったやつ。
③ センスとはタイミング。今、この瞬間しかない、というタイミングでジャストなパスを通すのが、技術でありセンス。その意味で、メッシは世界最高のパサー。
その「最高のパスを出したい瞬間」に、相手よりも必ず先に触れる場所にボールがある(自分がいる)こと。それを可能にするボディーバランスも含め、これが ドリ練の最大の目的。
上記の①~③とも、ドリとパスが全てセット。
ドリとパスがセットということは … 「持つ、離す、受ける」これらも全てセットであり、これらのどれか一つでも、疎かにすることはできない。全て同じ価値を持つ、大切な「技術」である。持つことを武器にしたいのなら「離す、受ける」も同じくらいの密度と量で練習すべき。
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【 セット ③ ~ 先取りジャンケン 】
例. 1 )
タッチライン際で相手を抜いた後、その抜かれた相手は必ず内側を通って奪い返しに来る。
それなのに、そのタイミングでインサイドを使って内側に切り返してその相手に引っ掛けてしまうとか、Jレベルでもよく見られる。
そこを通って来ることは、予想や想定や経験則を遥かに超えた、人間の行動心理学や物理学のレベル。間違いなくわかっているはずなのに、それに対してミスるなよ、と。
例. 2 )
エリア内でシュートモーションをすれば、相手は必ず足を広げて防ぎに来る。
日本人はその相手を見てシュートをやめてしまうが、外国人選手は、躊躇なくシュートを打つ。打とうとすれば相手は必ず足を広げ、その足の間が空く、ということをセットで考えているから。日本人では、大迫もこれが出来る。
例. 3 )
ドリブルの回でも記述したが、相手を一人抜けば、二人目が必ずカバーに来る。
「それ、分かってるし」と心で舌を出し、ノールックでそこにパスを入れていけばいい。
それは受ける側も一緒。味方が一人目を抜いたら、二人目がいる場所を攻略して受けにいけばいい。目と目が合わなくても、声をかけなくても、そこにパスは出て来る。
他にもいろいろ …
「こうすればどういうことが起きる」「間違いなく相手はこうしてくる」という事象の例を、チーム内、選手同士で考えて挙げてみるのも楽しいのでは。
上述したが、人間の行動心理学をもとに考えると、いろいろ出てくるはずです。
「そばに味方がいると、どちらも自分からは何もしない」とか
「人間は反射の生き物」とかとか…
そういった局面の捉え方をチームで共有していれば、無駄なアイコンタクトも声も要らなくなるし、相手よりも早くプレーが出来る。
サッカーでは「後出しジャンケン」ができれば最強、とよく言うけれど、本当に最強なのは、相手が何を出すか、最初からわかってること。つまり局面をセットで考えれば、
「先取りジャンケン」が出来る。
・相手の動きを見て、プレーを決める → 起きたことに対して反応している
プレーが遅くなる
先取りジャンケン
・相手の動きが、最初からわかっていてプレーする → 起こることがわかってる
プレーが早くなる
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【 セット ④ ~ 局面もセットで考える 】
今、自分がボールを持って相手と対峙している局面だとしましょう。この時
・目は、目の前の相手を見ず
・頭も、目の前の相手に縛られない
この状態でいたい。
自分が相手と対峙している時、同時進行で起きていること(味方が起こしていること)が分かってる、頭で見えてる、心で繋がっている。これこそがチームプレー。
実際、この時に味方が同時進行で起こしておくべきのもの
・受ける動き(一人目、二人目、スイッチ、ミラーパス、スルーパス)
・守備の先取り~拾う準備、奪い返す準備
これらを味方が起こしてくれているんだ、という認識を必ず「セット」で持ちながら、相手と対峙することが大切。
受ける動きに対しては …
「ジャストなタイミングでのパス」はもちろんのこと、
「それをフェイクにしてのドリ」そして「相手が一瞬パスを忘れた時のパス」
守備の先取りに関しては …
「奪われて良い時かそうでない時か」により、持ち方、持ち出し方、パスの質を決める。
今、自分が置かれている状況 と、これから起き得る状況
これを必ずセットで考えること。
でもでも
ボールを持ちながら考えるのって大変。ボールを持ちながら味方の動きを認知するのはもっと大変。
だ、か、ら、こ、そ!
ボールなんか見ないでも、ボールがある場所が分かり、相手よりも先に触れるようにしておかないといけない。だからドリ練をするし、ボールタッチの練習をする。
以上です。
つまり質の高いドリ練を徹底していけば、そのうち「タッチ数の少ないサッカー」を自然とするようになります。ヘイ!とかいうパスを呼ぶ声も皆無になる。
僕が考える『ドリ練をする理由、ドリ練をする意味』でした。