夕凪の街、桜の国
「この世界の片隅に」原作者のこうの史代さんが2007年に描いた
「夕凪の街、桜の国」を読みました。
昭和30年の広島から物語が始まり、原爆で人生を狂わされた家族と、ずっと続いていくその子孫の物語。
被爆者差別の現実を描いていて、「この世界の片隅に」よりも残酷で、悲しく、せつない。でも「この世界の片隅に」と同じように、全編にわたって強い強い優しさが流れてる。
本の帯にも書いてある通り、読み終わった後、まだ名前のついていない感情が心の深い所を突き刺してくる。まさにそんな物語。まだ未読の人、これ絶対読んだほうがいいです。
原爆を落とされた十年後に原爆病を発症し、23歳で死んでいく「皆実」の言葉が強烈。
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誰もあのことを言わない
いまだにわけがわからないのだ
わかっているのは「死ねばいい」と誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ
のどをまた、生ぬるいかたまりが通ってくる
もうただの血ではなくて
内臓の破片だと思う
うでは便器を持つのが精一杯
髪も抜けとるのかもしれんが
触って確かめる気力もない
あしたにしよう
あした…
嬉しい?
十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
「やった!またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?
僕はまだまだ広島のことを知らない。戦争のことも原爆のことも。そしてそれらはまだ終わってない。
また広島に行かなければ、と思ってしまったのだ。