Neutral football

現実の殻を破る。フットボールと社会をつなぐ

生まれて初めて、サポーターになった

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自分は生まれてこのかた、どこかのクラブのサポーターになったことがない。

「久保田さん、好きなチームはどこですか?」とかよく聞かれるけれど、そのたびに「どこもないっす」と答えてその場をシラけさせてしまう。ましてやサッカーを仕事にしてしまってからはもう、ファン目線でサッカーの試合を観ることは、ほぼなくなってしまった。

あそこはいいサッカーしてるから勝ってほしいなとか、それ程度は思うこともあるけれど、どこかのクラブを贔屓にして熱狂的に応援したという経験が、国内海外問わず、今まで一度もなかった。

毎週末のリーグを楽しみにして一週間を過ごして、週末ごとに一喜一憂して。
羨ましい。俺もそんな人生送りたいなぁと思って無理やりどこかを好きになろうと思ってはみたものの、やはり作為的に好きになろうとしたって所詮それは無理な話で、好きになれるわけもない。

、、だった。つい2ヶ月前までは。

そんな自分が、今ようやく「このクラブ、好きだ」「観戦じゃなく、応援に行きたい」と、純粋に心の底から思えるクラブに出会えた。これは錯覚ではなく、たぶん本当にそう。
毎週末を楽しみにしている自分に、自分が一番驚いているのだから。

今回は、そんなお話。

話は約2ヶ月前、3月上旬に「なでしこリーグ」開幕前のトレーニングマッチとして行われた
ジェフ千葉レディース vs バニーズ京都SC」のゲームを、千葉県まで観戦に行った日から始まる。

ジェフ千葉レディースは、なでしこリーグ1部の強豪クラブ。
対してバニーズ京都は、チャレンジリーグから「なでしこリーグ2部」へと、今シーズン昇格したばかりのクラブ。

バニーズは友人でもある越智健一郎氏がGMを務め、なおかつ、親交のある千本哲也氏が監督。千本さんは昨シーズンの開幕前に東京まで会いに来てくれて、その時は、チームづくりの観点でいろんな話をした。ワンピースのこと、孔氏のこと…

越智さんがGMで千本さんが監督。いろんな苦労話も聞いていたから、バニーズのことはずっと気になってはいました。

3年前には、こんな記事も書いてます。

選手の自主性を伸ばし、魅力的なサッカーで「京都から日本をひっくり返す」女子サッカークラブのはなし | FootballEDGE

もちろん気持ちで応援はしていたけれど、京都という遠い地でもあるし、毎試合観に行くとか、毎週末を楽しみにしてワクワクドキドキハラハラ…という「サポーター!」という程では、正直なかった。

そんな僕でしたが
この日の夜は越智さんを招いて渋谷で勉強会を行う予定。で、せっかくバニーズが遠征でこちらに来てるならと、越智さんのお迎えついでに、ジェフとのゲームを千葉まで観に行った、というわけです。

www.sakaiku.jp

開始1分、越智さんが監督をしている京都精華の卒業生、谷口木乃実選手が相手DFとの接触で足を負傷し、早くも交代。今シーズンからバニーズに移籍して来て、そのシーズン開幕直前での怪我。本人も相当ショックだっただろう。表情を見たら完全に落ちていて、彼女が高1の時から知ってるし応援していたので、本当に残念な負傷だった。

そして
この予期せぬアクシデントにより、交代でピッチに送り込まれたのが 小川くるみ という選手だった。

今シーズン、大卒でバニーズに加入したばかりという彼女。
恥ずかしながらこの日初めて彼女の存在を知ったのだけれど、ゲームが進むにつれ、彼女が放つ独特のたたずまい、そしてそのプレーぶりに、僕はだんだんと惹きつけられてしまった。

予期せぬタイミングでの出場ということで動揺もあっただろうし、急がずにショートパスを細かく繋いでいくというバニーズ独特のスタイルに自分を早く適合させなければ、という思いもきっと強くあったのだろう。そんな彼女のひたむきさと必死さ、時には葛藤が、とても伝わってきた。

クレバーな選手なんだろうなという印象を持ったけれど、プレースタイルだけでなく、彼女のひたむきな姿そのものが、とても魅力的に思えて。
また観たい、これから応援していきたいって思える選手に出会った、そんな気分だった。

 

そしてもう一人
この日のゲーム、僕らが観戦してる簡易スタンドの横でずっとビデオ撮影を担当していたのが、加戸由佳 選手。

彼女は岡山の湯郷ベルで活躍して、なでしこリーグで通算200試合に出場している一流選手。2013年には、日本代表にも選出されている。

【インタビュー】バニーズ京都SCへ新加入の元日本代表DF加戸由佳「本気でサッカーと向き合い、新しい自分に!」 | SOCCERLTURE

今シーズンからバニーズに移籍してきたものの、足を怪我してまだ復帰できていないということで、この日はベンチ外だった彼女が、撮影係を自ら買って出ていた。

横でそれを見ていたGMの越智さんが「いいの?」って聞いたら、
満面の笑顔で「これくらいしか出来ないですからー」と。

日本代表経験もあるベテラン選手の、この謙虚な姿にもうズッキュン。なんて素敵なパーソナリティーなんだろうと。なかなか出来ないですよね。早く復帰してほしいな。

小川くるみさん(No.7)そして加戸由佳さん(No.16)
思いがけず、この2人の大ファンになってしまった僕なのでした。

 

余談ですが
今シーズン、バニーズの選手達はアウェーの試合へ新幹線で移動する際、全員お揃いのシャツを着用するらしく。
静岡の新進気鋭ブランド「Chapeu(シャペウ)」作成のカッコいいシャツなのだけれど、そのシャツを全員分揃える費用をどう捻出するか思案したGM・越智氏は、選手一人一人の「シャツサプライヤー」を募るアイデアを思いついたと。

「あの選手が着るシャツの費用は自分が出した」
「自分はあの選手をサポートさせてもらってる」

となれば、間違いなくその選手の動向は気になりますよね。
「今日は試合出たかな」「ベンチ入りしてるかな」「怪我の治り具合はどうかな…」とか。
すなわちそれは、直結でファンを増やすことにも繋がるし。

もちろんこの日さっそく、僕は小川くるみ選手と加戸由佳選手、二人のシャツサプライヤーに名乗りを挙げました。
後日、二人からお礼の動画が送られてきた。嬉しい〜

 

翌日は、ヴェルディグランドにて日テレベレーザとのゲーム。
前日よりも「自分らしさを出そう」という思い(僕の勝手な想像だけど)を小川くるみ選手から感じて、なおさらファンになった。

 

バニーズのサッカーは、観ていて楽しい。

急がず、慌てず、短く緩いパスで相手を引きつけながらいなし、そこに個々の特性をうまく作用させながら局面を打開していく。自分がミスらないことじゃなく、味方を成功させることで成り立つ相互作用。そのためにもなおさら、個々の技術と味方同士が連なる意識と仕組みが必要な、実はとてもハイブリッドなフットボールだ。

「相手の速さを利用するんやで〜」

千本さんが盛んに出していたこのコーチングに、バニーズの「やりたいこと」がとても表れているような気がした。

もっと観たい。素直にそう思わせてくれる、ワクワクフットボール

 

10日後の3月21日、いよいよなでしこリーグが開幕。
バニーズはアウェーで「エルフェン狭山」とのゲーム。自クラブの試合が中止になったので、車を飛ばして川越まで観戦に。

雪が降り、グランドの状態もかなり悪い中でのゲーム。バニーズの特徴であるショートパスを披露するには難しい状況だったけれど、逆に、技術はこういう劣悪な環境下でこそ初めて試されるし、真価を発揮するもの。
一度染みついた技術と習慣は錆びつかない。バニーズの選手達のちょっとした持ち出し方や相手へのいなし方が、この悪条件下だからこそ、余計に際立っていた。

ベテランCB・山本選手のゴールで1-0勝利。試合終了の瞬間、僕の前で応援されていたある選手のお父さんは、号泣しながら喜んでいた。

まだまだ認知度の低いなでしこリーグ、しかも1部でもない、全国的にはまだまだ無名のクラブ。でも、たった一回の勝利で人を泣かせるチカラがある。
選手をサポートする、クラブをサポートするってこんな喜びがあるのかと、うまくは言えないけれど、しみじみ感じた光景だった。

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そして僕はこの日、ようやく「心から応援したい」と思えるクラブを見つけた気がして
つまり「サポーター」になれた気がして、そんな自分に驚いてもいた。

監督、GM、選手達、クラブを支える人達、クラブが持つ雰囲気…
それら全て含めて「好きだな」って思える。
たったひとつの勝利が掛け値無しに嬉しかったから、この気持ちはきっと、錯覚ではないのだろう。
「これからは《観戦》ではなく《応援》に行こう」と、生まれて初めて思った。

 

それからひと月以上が経ち、ゴールデンウィーク真っ只中の5月3日。
バニーズ京都が、東京にやってきた。

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武蔵野陸上競技場で行われたスフィーダ世田谷戦。当然応援しに行ったけれど、強風の中、スカウティングされやすい特徴を見事に突かれ、0-3で敗戦、、

その日の夜から、仕事を依頼されて京都へ。せっかく京都に行くならと、ゴールデンウィーク最終日(6日)に京都で行われるホームゲーム(vs ニッパツ横浜FCシーガルス)も応援してから帰ろうと思い、滞在を延長して応援に。

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ちなみにこの試合のハーフタイムでは、例の加戸由佳選手が抜群のMCぶりを見せてくれてました。人を惹きつける魅力が、これだけでも伝わってきますね。

 

 

楽しいハーフタイムとは一変。ゲームでは、やはり「バニーズの特徴を消す」相手のしたたかさにハマってしまった形となり… 0-2で、またも敗れてしまった。

この日の試合の様相が、分かりやすく記事になってました。今のバニーズの立ち位置的なものも、感じ取れると思います。

パスサッカーが陥る「不思議な試合」…バニーズ京都SCが表すのは、日本の未来?

 

過酷なリーグは容赦なく続く。その翌週、13日に行われたアウェーのオルカ鴨川戦。この日は仕事でどうしても応援に行けなかったのだけれど、スマホを片手にリアルタイムで状況をずっと追いながら、バニーズの試合を気にしていた。

しかし、失点の速報ばかりが更新されていく。終わってみれば、0-4で3連敗。バニーズにとって、5月の三連戦は非常に辛いものとなってしまった。

 

現時点で1勝1分け4敗、10チーム中9位。

バニーズが戦っているのは、もはや育成ではない《トップリーグ》の舞台。ただ内容さえ求めていけばいいというものではない。それは重々承知しているし、千本さんをはじめとするバニーズのスタッフ陣も、そんなことは言われるまでもなく分かりきっていると思う。

しかし

結果を求めると同時に
「このサッカーをまた観に来たい」
「こんな楽しいサッカー、他のチームはどこもやってないよ!」
と、ファンに思ってもらえる魅力的なサッカーを追求していくのも、結果と同じくらいに求められる重要なミッションでもあると思う。トップリーグだからこそ。

現に僕はその部分も含めて(かなり大きな要素)バニーズのサポーターになったのだから。

さらに
「やってて楽しい」
「このサッカーなら、私はまだ現役でサッカー続けていきたい」と
選手達が心の底からそう思えるようなサッカーを、監督の千本さんは追い続けているのだろうし。

 

千本さんが三年前に話していたこと
「理想を目指しながら、現実と向き合う」
そのハードルは三年前より遥かに高い。でもだからこそ、それをいなし、連なるチカラでパスを繋ぎ倒しながら、高い壁を乗り越えていってほしい。

ブレず、諦めず、貫くと決めたものは貫いて、最後まで「らしく」戦ってほしいです。

自分の力ではどうにもならないことを、自分のことのように思って心配するのも、サポーターならではの苦しみなのだろうか。
近いうちにきっと自分のことのように喜べる日が来ることを知っているから、きっとどこのクラブのサポーターたちも、同じようにクラブを信じ支え続けていけるんだろう。

 

微力ながら、応援してます。バニーズ京都SC、ガンバレ。

www.bunnys-kyoto.sc

所属より、参加

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先日、食事の席で指導者仲間から聞いた話なのですが
彼のクラブを辞めた子のお母さんに、その後会った時
「サッカー続けてますか?」と聞いたら
「続けてます!家の前で」とお母さんが答えたと。
どこかに所属してなくても「サッカー続けてる」って言えるお母さん、最高ですよね。
こんな風に言ってもらえるお母さんを持つその子も、幸せだろうな。

日本人はどうしても「所属」に基準を置きたがってしまいがち。
サッカーに限らず、他スポーツでも学校でも塾でもなんでも
「どこどこに入っている」
「どこどこに通っている」
どこに所属してるか。そこに価値を見出したがる。
そしてそれはだんだん帰属意識に発展し、さらにいけば依存となる。
そしていずれ、自分が依存している場所に適合しない他者を「変」と貶め、疎外していくようになる。意識的にも、無意識にでも。

移籍した子を「裏切り者」扱いしたりとか、ジュニア年代でも普通にあるからね。
それも、大人達がそれをこぞって言う。
「お前はうちの選手なんだから」と、大人側の所属概念を持ち出して子どもに帰属を強要し、遊びや家の用事、旅行などで試合や練習を休むことを許さなかったりとかもある。

以前、僕がフットボールエッジのコラムで「移籍なんか自由にさせればいいじゃないか」と意義を唱えたところ、それはもう、各地域からあらゆるバッシングを受けました。大炎上した。
「会社と同じ。自分の都合で辞めるなんて勝手だ」とか
「自分が辞めたらチームに迷惑をかけることを分からせないといけない」とか。
ジュニア年代に指導者として関わる大人が、こういうことを平気で言ってくる。言ってくるってことは思っているわけで、普段、自身のチームで子ども達にそう言ってるわけですよね。子どもにとったらもう、ほぼ地獄でしょこりゃ。

 

【少年サッカー移籍問題2】子どもが「移籍したい」と言うのは、そのチームに魅力がないということ【久保田コラム】 | FootballEDGE


「所属」「帰属」はもう古い。
それが悪い方向に向かえば「依存」になり、いずれは「強要」にもなる。
うちのクラブにも、うちだけでサッカーをしているわけではなく、地域の少年団などに「所属」している子が数名いますが
週末に試合があるとして、子どもはうちで出たいのに「もう一つのチームの監督からそれを許してもらえないから、仕方なくうちの試合は休みます」みたいなの、よくある。
そんなの子どもが決めればいいだけの話。反対に、うちじゃなくあっちで出たいと子どもが言うのならそうすればいいし、それに対しうちはそれを許さないとか、そんなことは絶対しないし言わない。そんなダサい人間ではないし、ダサいクラブでもない。

自分の行きたいところへ行く。それが週ごとに変わったっていい。
せめてジュニア年代では「所属」の概念を変えていかないと、サッカーに限らず、スポーツは文化として根付かないと思います。

自分に合う、いろんなチームでサッカーすればいいし
サッカーだけじゃなく、他のスポーツもやったほうがいい。
でも今のままでは「所属」がそれの邪魔をする。

所属よりも参加。これからは、絶対にコレです。

冒頭で紹介した、家の前でサッカーしている子
きっと義務感もストレスもなく、今は自分のペースで、家の前でボールを蹴り、触り、自分の頭の中でたくさん妄想をしながら、楽しくサッカーをしてるんだろう。
案外、こういう子が将来、規格外のとんでもない選手になるんです。

 

こんな記事もあります。タイムリーすぎるので、参考までに。

mirai.doda.jp

 

 

現場のサッカーコーチから、田嶋会長へ ②

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(画像はグノシーより)

 

ハリルホジッチ監督をいきなり解任したJFA、特に田嶋幸三会長への怒りに任せて、前回書いたコラム。

「会長として、どんな時でも、日本サッカーの発展を考えないといけない」

会見でこう言い放った田嶋会長に対し「それ言うなら、まず先にやることあるでしょ」という内容だったのだけれど、こちらの予想以上に、大きな反響を呼びました。

サッカー指導者のみならず、サッカークラスタ、サッカーファンの方々が多く拡散してくれた他、お笑い芸人コンビ・ダイノジの大谷さんまでも、ツイッターで拡散してくれました。

neutralfootball.hatenablog.com

 

草の根の現場の実態や現状を、田嶋会長は

① 何も知らない

② 知っていてあえて無視してる

③ どうでもいいと思っている

④ どうにかしなければとは思っているけれど、手が回らない

おそらくどれかなのだろう(せめて④であってほしい)けれど、あの「日本サッカーの発展を第一に考えなければいけない」という会長の言葉に、思わず「お前が言うな」「その前に現場の俺たちの声を聞いてくれよ」と、TV画面に突っ込んだ人も多かったのでしょう。

 

もちろん、JFAに怒りを感じている、愛想をつかしているのは僕だけじゃない。

そんな人達の切実な声を紹介する媒体として、このコラムを使ってもらうことを考えました。

まずは

昨年12月、小学校の体育の授業にフットサルを導入することに、JFAが反対の意見を提出したというニュース。これは結構な物議を醸したんですが、その後、どうなったんでしょう。

www.asahi.com

www.pivo.co.jp

futsalx.com

僕のコーチ仲間でもあり、CA横浜セレーラ というクラブで代表を務め、フットサルにも造詣が深く、自身のクラブでもフットサルを指導している臼井隆弘さんが、以下のような見解を述べています。

ここでそれを紹介すること、そして実名を出すことは、臼井さん本人の了解を得ています。

↓↓

Fリーグを創設したものの、根っこに感じるのは「フットサルはサッカーファミリーではないのでしょうか?」ということです。

フットサルではなく、サッカー。「体育であれば《ミニサッカー》でないと、子どもが混乱する」と。これが協会が文科省にチャチャ入れた理由のようで

混乱しているのは実は自分たちなのでは?フットサルを承認出来ないのは、フットサルを誤解しているからだと感じています。

フットサル、バスケ、バレー、ホッケーなどなどボールスポーツチームをクラブに持ち、互いの理論を指導者間で交換し磨き続けているバルセロナという1クラブにでさえ、協会は遠く及ばないなぁと。

知識が足りないのにも関わらず、認めないで「私は親だから大人だから正しい」「お前らは子どもだからまだ解らんのだよ」と、踏ん反り返る我が親に半ば諦める子の気持ちになっています。

 

「踏ん反り返る我が親に、半ば諦める子の気持ち」

こんなこと、現場の指導者に言わせないで下さいよ。

でもこんな気持ちになっているのは、決して臼井さんだけではないと思います。

 

「会長として、どんな時でも、日本サッカーの発展を考えないといけない」

そう言い放った田嶋会長は、この言葉が、現場の末端にいる僕らのような指導者からブーメランとなって返ってくること、これっぽっちも思っていなかったのだろうか。

 

ワールドカップよりも大切なこと、お金よりも大切なことに、僕らは日々、現場で真剣に向き合っている。そのことを分からない、想像すらしない人に会長など務めてほしくないし、日本サッカーの未来など、二度と語ってほしくない。

 

文責 / ロボスフットボールクラブ代表・久保田大介

LOBØS FOOTBALL CLUB

 

 

言葉の大切さと奥深さ 〜 園児が教えてくれること

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ある日の園児練習にて。

園児と練習してる時、上の画像のようにコーンをゲートに見立て、その間を通る時にスピードを上げるような見本をまず僕がやってみせて
「今どんな感じでやってた?」と聞けば
彼ら「ゆっくりと、速く」と答えが返ってくる。
では「そだねー。じゃ、コーチはいつスピードを上げてた?」と聞いた。
てっきり「コーンの間を通る時」と返ってくるかと思っていたら
「コーンの間を通ろうとしてる時から」と返した子がいまして。しかも年中さん。まだ4歳。
Detailの違いだけど、大きな違いっすよね。これは。
子どもはちゃんと見てる。

「通る時」と「通ろうとしてる時から」では、言葉の意味としても大きく変わってくる。
確かに、コーンの間を通る時にスピードを上げたいと思って自分は見本を見せていたのだけど、実際は通ろうとしてる時からスピード上げてる。
相手を抜く時は「相手の1m手前から相手の1m背後までのところでスピードを上げるんや」と、今月初旬、大阪で尊敬するあの方が言っていた。

「確かに。じゃみんなも《通ろうとする時》からスピードを上げてやってみよう」となり、彼らのドリブルは緩急のメリハリがついたモノへと変わっていった。4歳の言葉が、周りに子達のプレーを変えた。

 

子どもは、ちゃんと見てる。そしてプレーの本質を、しっかり言葉で説明できる。たかが園児、たかが4歳とタカをくくっていたら、大切なことを伝えられず、ましてや偽物の言葉は見抜かれてしまう。

彼らの持つ感性を、改めて実感した場面だった。

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この画像は、マーカーで設定したグリッドの中に鬼を置いて、鬼に蹴られないように通り抜けるという練習なのだけれど
ここでも、ほぼ言葉だけでプレーを引き出せる。

「今!っていう瞬間を見つけてごらん」と言うだけで、子ども達は鬼の位置を確認し、鬼の向きと鬼の目線を気にし、他の選手がグリッドに入っていって鬼がそっちに引きつけられた瞬間を狙って行くようになる。
手取り足取り、ましてや本当に子どもの手を引っ張って「ほら、サッカーは広がるんだよ!」と教えるスクールもあるけれど、そんなことは愚の骨頂。

彼らを馬鹿にしてはいけない。想像と妄想が広がる言葉をぶつけて上げれば、彼らはめっちゃ考えますよ。めっちゃ工夫します。めっちゃ観察した上で、実行に移すわけです。
個性とはそうやって引き出し、伸ばしていけるんじゃないのかな。

言葉って本当に大切。だからこそ僕ら大人は、自分の哲学を持ち、自分の言葉を持ち、それをどう放てば、彼らに伝わり沁み入っていくのかを、常に考えないといけない。

その大切さは子どもが教えてくれる。園児は僕らの先生なのだ。

現場のサッカーコーチから、田嶋会長へ ①

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(画像は産経ニュースより)

 

日本サッカー協会(以下、JFA)の田嶋会長は、ロシアワールドカップに勝つためだけに、この時点でハリルホジッチ氏を切ったわけではないだろう。

ハリルホジッチ氏から冷遇されかかっていた選手達からの直談判メールを受け、さらには電通そしてadidas、KIRIN等の大手スポンサーからの圧力、ハリルホジッチ氏を連れてきた霜田氏が協会から去り、電通の岩田氏が理事になったタイミング、その直後の解任劇。
Oh、いかにもわかりやすい。そこに政治的そしてビジネス的な力学が働いていたのだろうということは、容易に想像できる。

このことは他でも多く指摘されているし、でも実証はできないからこれ以上は言わないけど、まぁそういうことだよね。

それよりも
4月9日の記者会見で、田嶋会長が、ハリルホジッチ監督を解任した理由の中で言ったこと

「会長として、どんな時でも、日本サッカーの発展を考えないといけない」

いけしゃあしゃあと放ったこの言葉が、僕にはどうしても許せない。

まさかロシアワールドカップで結果を残すことが、日本サッカーの発展への最優先事項だとでも思っているのか。裏を返せば、ロシアワールドカップで結果を残せなければ、日本サッカーの発展は地にまみれるとでも?

4年に一度のワールドカップ至上主義はこの国ならではの風潮ではあるだろうけども、サッカーはワールドカップだけじゃない。むしろワールドカップはオマケ。そして代表チームもオマケであるべきだ。

これからの日本サッカーを担う選手達、それを支え応援する人達、その人達が楽しめる環境。
それこそが、日本サッカーのこれからをつくっていく主役、そのものでしょう。

ワールドカップでグループリーグ全敗しようが、次回のワールドカップに出られなくなったとしても、サッカーはずっと続いていく。

いつでも誰でもどこでもサッカーが不自由なくやれる場所があり、トップリーグであるJリーグを筆頭に全国津々浦々で各カテゴリーのリーグ戦が充実し、それを観られる環境が整い、サッカーの競技人口が増え、サッカーファンが増え、その積み重ねとしてサッカー文化が醸成され熟成し、その結果として、代表チームが強くなる。

そのサイクルを構築していくことこそが、日本サッカーを発展させていくということ。
その仕組みづくりの表面だけは出来ているように見えても、肝心のその中身、草の根の現場での実態や環境を見ると、JFAが一丸となり、必死に、真摯に取り組んでいないのは、明らかにわかる。

あなたを筆頭にしたJFAは、その努力を怠ってるじゃないかと、田嶋会長に直接ぶちまけたい気分だ。

 

選手登録費、チーム登録費、指導者資格更新料、審判資格更新料、、
一体、子ども達や僕ら指導者達から、毎年いくら捲き上げたら気が済むんですか。

 

「どんな時でも、日本サッカーの発展を考えないといけない」

そう言うのなら、全国各地で「新規チーム」が連盟に入れてもらえない問題を、まずなんとかして下さいよ。

日本サッカー協会に相談しても「県協会に相談して」と言われ
ならばと県協会に相談しても「市の協会に相談して」と言われ
市の協会に相談したら「区の協会とうまくやって下さい」
だから、その区協会が門前払いなんですって。こんな地獄ループが続く。

「誰々に挨拶しないと受け入れられない」
「誰々に筋を通さないと相手にもされない」

そんなヤクザ世界のような話がジュニア年代でまかり通っているんですが、このことに関してJFAはスルーし続けるんでしょうか。そういえばJFAは、サッカーファミリーを増やすとか言ってませんでしたっけ。
本当に日本サッカーの発展を第一に考えるのなら、この問題、真っ先にどうにかして下さい。ジュニアだけでなく、ジュニアユースだってそう。連盟に入れないで苦しんでいる新規チームが、全国にはたくさんある。

何千もの子ども達(もっとかも)が「公式戦」に出られない状況が続いてる現状を、まずはなんとかして下さい。

 

もっとグランドつくって下さい。巨額の資金を草の根に回して、土のグランドを人工芝に替えて下さい。

 

指導者資格、コネがないと上級を受けられないアナログなシステムをいい加減、改善して下さい。
指導できるチームもないくせにコネだけある人がS級やA級持ってたって、何の意味もないでしょう。だったら、僕ら現場の人間達に、もっと門戸を開けて下さい。

日々忙しい中で目の前の選手達と向き合って関わって、資格取りに行く時間もない学校の先生達にもライセンスをあげられるような、そんな仕組みをつくってください。

 

情報を協会だけでパッケージしないで、現場の指導者達にも全てオープンにして、皆が勉強できる仕組みをつくって下さい。
その国のサッカースタイルをつくるっていうのは、そういうことでしょう。

 

女子サッカーの選手達の環境改善に、本腰入れて下さい。

なでしこリーグの選手達、Jリーガーよりよっぽど練習してるし、練習終われば毎日働いている。プロ選手なんてひと握りだけ。サッカー少女達に、もっと夢をみさせてあげてくれませんか。

 

日本中の河川敷グランドに、女子専用のトイレや更衣室をつくってあげて下さい。今はあまりにも、女子にとって劣悪な環境が多すぎる。それくらいの予算、余るほどあるでしょう。


女子の競技人口が増えれば、それはすなわち「サッカーやったことあるお母さん」「サッカー好きなお母さん」「サッカーに詳しいお母さん」が増えるということ。

そしたら、息子や娘にサッカーやらせるでしょう、きっと。
そうやって、年代を重ねてサイクルを回して、競技人口は増やしていくものじゃないか。

 

安倍政権、官邸の中枢にいる某政治家は、自分の選挙区の少年サッカー連盟の名誉会長に就いている。選挙戦になると、その地域のジュニアチームから保護者や指導者が電話作戦の人員として動員される。パーティーにも強制参加。断ると、グランドが使えないなどの圧力が加わる。

そんな現状がある。政治家にサッカーが利用され、ジュニアチームが利用され搾取されていることに、JFAとして、どういう立場を取るのか。
当然、この件は誰かしらからJFAへ訴えが届いているはず。それに対して、JFA側から何か反応があったという話も聞かない。JFAとして以前に、サッカーを愛する者として、会長はどっち側に立ちまスガ?まさか、政治権力側に立つなんてことはないでしょうね。

 

まだまだ言いたいことはあるけれど、もうこの辺にしておきます。

サッカーライター、サッカージャーナリストの人達は、これらのことには踏み込まない。知らないわけはないと思うけど、知ってて知らんぷりならば尚更タチが悪い。ペップがどうの、スペインの育成がどうの、戦術がどうの…といった、見栄えのいい話題しか取り上げないしね。

 

ロシアワールドカップなんて、どうでもいい。
けれど、そのワールドカップを口実にしてこの時期に監督をいきなり解任。
そういうことをする国なのか。そういうことをする協会なのかというニュースは、もう世界中を駆け巡ってしまっている。

ハリル憎し、スポンサー様へのコンフォーミズムで首を切ったのだろうけど、このことで、今後、海外の有能な監督が来てくれることはかなりの確率で期待できなくなった。
このことの方が、2ヶ月後のワールドカップで負けるよりも、よっぽど損失だろう。

そんな想定すらできないってことは、さすがにないと思うのだが。

 

最後に

もう数年も前の話だけれど、ある大雨の日、東京の駒沢競技場内にある「第二球技場」で、中体連の公式戦が行われていた。(確か都大会だったと思う)

僕は他の用事で駒沢にいたのだけれど、その時、第二球技場では某学校の試合が行われていて
その試合を、第二球技場の外の木が生い茂っている中、傘もささずに全身ずぶ濡れになりながら、木の陰からこっそり試合を見つめている人がいたんです。

それが、田嶋会長だった。

田嶋会長のご子息が、その学校の選手として出場していたわけです。
当時田嶋さんはまだJFAの会長ではなかったけれど、要職には就いていたし、サッカー関係者ならば当然、田嶋さんの顔は知っている。

スタンドに行って堂々と観戦すればいいものを、スタンドに行けばきっと屋根のある関係者席に誘導されるでしょう、周りが気を使って。
それを田嶋さんもわかっていたから、あえてスタンドには入らず、雨でぐちゃぐちゃになっている泥の森の中に隠れて、ずぶ濡れになりながら、息子さんの試合を観ていたんだと思います。

ずぶ濡れになってじっと試合を見つめていた田嶋さんの姿がとても印象的で、あの日のことは、僕は今でも強烈に覚えてる。


きっと謙虚な人であるはずだし、サッカーに対する愛も、とても深いものがある人なんだって、僕は今でも思ってます。そう信じたい。

だからこそ
「会長として、どんな時でも、日本サッカーの発展を考えないといけない」
と仰るのならば、その言葉を本当に実行に移してほしいと思う。

そしてワールドカップが終わった後でもいいから、今回の顛末の真相を、僕らに説明してほしい。心から、そう願ってます。

田嶋会長、お願いします。

 

文責 / 久保田 大介

suertesc.pokebras.jp

 

運動神経よりも、自信があるかないか


優勝後の、ロンダートからのバック転(2018.3.4)

 

近頃よく思うのだけど、
子ども達に対し、俗に言う「運動神経がいい」「運動神経が悪い」という言い方や評価の仕方はあまり正しくなく、結局のところは

「自信がある」のか「自信がない」のか。

と、いうことのような気がしてる。

それは決して運動神経の話だけではなく、流行りの「インテンシティー」とか「デュエル」とか…
相手に対してだったりボールに対して、強く行ける、行けない、云々の話もそう。
得てしてそこが物足りない子に対して「もっと強く行けよ」とか「気持ちが足りない」とか言ってしまう指導者がまだまだ多いと思うのだけれど

そう簡単な言葉で片付けてしまう前に、まず「この子は自信がないんじゃないか」と視点を変えてみると、大抵は合点がいく。
声出せー!とか言う人もまだたくさんいるけど、自信がないのに声なんて出せるわけないよね。どんだけドSなんだか。

自信があるから躊躇なく行けるし
自信がないから躊躇してしまう。

そりゃそうでしょと。

 

そうなると話は簡単で、つまり大事なのは、自信をつけさせること。

サッカー以外のこと(なわとび、相撲、絵など)を褒めたことをキッカケに、サッカーが急に上手くなっていく子、積極性が急に出てきた子を、今まで何人も見てきた。

彼らが急激に変わっていったロジックは、きっとそういうことなのだと思う。

 

結構前の子の例ですが
それまでまるで積極性もなく、ボールも受けようとせず、そばにいる相手のボールすら奪いにも行けなかった子が、夏合宿の遊びで相撲大会をやったらまさかの優勝。
その日から、彼のニックネームは「横綱」になった。

若干8歳で横綱に就任した彼は、案の定そこからサッカーにも俄然やる気を出し、積極的にもなり、練習を休むこともなくなった。

 

今年になってうちのクラブに入ってきた1年生の子は、サッカーの他に体操教室にも通っていて、ロンダートやバック転もできてしまう。
当然、身体の動きもしなやかだし、反応も格段に早い。恐怖心もないだろうからこぼれ球やそばの相手に対してもガンガンいけるし、練習のたび、試合のたび、どんどん上手くなっていく。先日飛び級で2年生の大会にも呼んだくらいで、そこでも千両役者ばりの大活躍で、優勝に貢献してくれたような子なんですが

彼を見ても、その上達ぶりやパフォーマンスは「運動神経」で片付ければ簡単だしおそらくそれも正解なのだろうけれど、それ以上に、とにかく「自信満々」だなって。
バック転できれば、そりゃ自信持つよね。。

 

サッカーじゃないものでも何でもいいから、自信をつけさせる。
子どもの頃から、いかに成功体験を積み重ねさせてあげられるか。

ジュニア年代に携わる指導者にとっては、ここが一番肝のような気がしてます。
何かを教えることよりも、大事なことなんじゃないかな。

 

大道芸を練習していた人のこと

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世田谷区と杉並区の境目あたり、住宅街の中に突如現れる広大なグランド。
ここは予約も要らず利用料金も要らず、制限もなく、そのかわり利用者同士お互いに譲り合いながら使ってくださいね、という場所。

だからうちらみたいにサッカーしてる団体もいれば、一人でボール蹴ってる大人、フットゴルフの練習に使う人、野球、バドミントン、その他の種目…
はたまた
幼稚園に子供を迎えに行った帰り、お母さん同士がシート敷いて喋ってたり、おじいちゃんが散歩してたり、カップルがイチャイチャしてたり…という、
なかなかにポジティブカオスな空間なわけです。

で、この日は
うちらがサッカーしてる向こう側に、大道芸でよく見るやつ「中国ゴマ」?のような芸を練習してる人がいた。

調べたら、正式名称「ディアボロ」っていうらしい。
これを、子ども達がキャッキャとサッカーしてるそばで、あの人が黙々と、一心不乱にずっと練習してたわけです。

リフティングだったりドリブルだったり、個人技を多発する選手のことを「あんなのサッカーじゃない、サーカスだ」とか
「大道芸だ」と、斜め上から嘲笑するようにバカにする大人が、サッカー界には多数いる。特に指導者界隈。

そういう、何かを(誰かを)ネガティヴな例に出して何かを(誰かを)バカにしたり「そんなの意味ないよ」などと一刀両断してしまう大人など、指導者の資格がないと僕は思っている。それは別の機会に書くけれど

「あんなのサーカスだ」っていう言い方はサーカスのことを舐めてるよね。あれ、命がけじゃないですか。失敗したら死の危険と隣り合わせ。
ピエロの人だって涙ぐましいトレーニングをしてピエロを演じてるし、動物だって命がけ。それを訓練している人達だって、命と向き合いながらやっている。

でもサッカーは、命がけじゃなくてもできます。普通にできます。苦労なくできます。
死の恐怖と隣り合わせなんてことは、ほぼない。

大道芸の人は、街に出て、そこにいる人達に目を止めてもらってなおかつ芸を評価されないと、一銭もお金をもらえない。
普段、見えないところで必死にトレーニングを積んで、街に出てくる。この日ディアボロを練習してたあの人だって、きっとそうでしょう。

そんなことを、少しゲームの内容が緩くなってきた子ども達を集めて話しました。

どんなプレーが好きでも、どんなことをやりたくても、それは別にいい。でもそれが好きなら、それをやりたいのなら、君達にとっては今この時間がそれを必死に練習する時間なわけで
時間が限られてるし、無駄に過ごすのはもったいない。あの人を見れば分かるだろう?と。

言わずもがな、その後のゲームはガラリと変わり、最高の雰囲気になった。
ディアボロなあの方に感謝しないといけないな。